点滴灌水の歴史
古代中国では、土中に埋めた土器を水で満たし、水が土中へじわじわと浸み出すことで潅水したことが、中国前漢晩期(紀元前206年 – 8年)に書かれた農書『氾勝之書』(はんしょうししょ)に書かれています。
その後1860年-1920年代にドイツで土管で作った灌水兼排水システムを用いた地中灌漑の実験がおこなわれ、その後穴のあいたパイプが売り出され、欧州・米国に広がりました。
1958年には、イスラエルで排水パイプの中から排水時の水圧を制御するプラスチックの排水回路(エミッター)を開発し、これを使った点滴灌水技術を確立しました。これを開発したNetafim社が1964年に特許を取得しました。特許が切れた現在、多数のメーカーが園芸用や環境にやさしいポリエチレンパイプなど新素材のパイプなどを提供しています。
この点滴潅水の技術は、世界的に広く使用されるようになり、現在は農業用潅水装置(Agricultural irrigation equipment)として資材、機器、そのテスト方法などがISO(国際標準)となっています。
点滴灌水の長所・短所
植物にとって
- 長所は、根群域の水分を適切に保つことができることです。
- 短所は、根系が浅くなることですが、これはチューブを地中に埋め込むことで改善できます。
土壌環境
土壌浸食を最小化できる、液肥で肥料の塩類蓄積を防げる、農法に係わらず使用できる、
水をまき散らさないので雑草が軽減します。
施肥
液肥で作物状況に合わせて施肥できることです。これはファーティゲーションと呼ばれます。
生産性
散水の労力と時間を大きく節約できます。さらに、雨任せではない計画的で積極的に潅水することができ、高い水分配効率で水資源を有効活用することができる、局部的な潅水で肥料の損失の最小化を図ることも可能です。
経済性
長所は、潅水営農コストを削減できる、水資源費用の最小化、最小限の肥料で施肥を行うことができることです。
短所は、初期投資が必要、撤去する時、追加の撤去費用がいる、リサイクルやリユースの計画が必要です。